スイカ泥棒

「スイカ泥棒っているんだよ」と彼がいう。なんでも子供のころ、実家で作っていたスイカが食べごろになった頃なくなってしまったのだという。
スイカを作っていると言っても、別にスイカ農家なのではない。いわゆる家庭菜園である。
その年のスイカは3つ4つとなっており、食べごろを考えて番号をつけて、楽しみにしていたそうである。ところが、明日こそ食べごろだ、と思っていたスイカが、翌日なくなっていたのだとか。
「どれが食べ頃か分かる人の仕業に違いないと思う」と彼はいう。「そりゃそうでしょう」と私も思う。
スーパーで切ってあるスイカしか買ったことがない私のような人間には、まずどれがスイカ畑なのかが分からない。まさか葉っぱも何もないところにゴロンと転がっているわけではないだろう。それに分かったとしても、まず畑に入る勇気はない。他人の敷地というだけでも嫌だし、さらに畑では足跡もつくだろう。こちらの靴も泥だらけになってしまう。その上で、どのスイカが食べごろかなんて分かるわけがない。
そこまでして、とったスイカは美味しかったのだろうか?結構スリルを味わったのだろうか?
どんな犯人なんだろう?と想像しつつ、がっかりしたという少年時代の彼を思うとなんだか可愛く、結局笑ってしまうのである。